西村内科脳神経外科病院
飲み込む力の低下した高齢者がのどに詰まらせる事故が高齢化社会の進行とともに増えている。 正月三が日においては必ずこれを原因とした救急車の出動があるといわれている。 喉詰まりを起こした老人の口に掃除機のホースを突っ込んで吸い出したところ一命を取り留めた という事例がある。ただしこの方法は衛生的ではないため、あくまでも最終手段として用いるべ きである。 --------------------------------------------------------------------------- -------------------------------------------------------------------------------- 日本おける窒息事故は、不慮の事故による死亡の中で交通事故に次いで多く、平成9年に おける死亡総数は 7,179人にのぼっている。 窒息の主たる原因は食物に関する物だと考えられているが、その詳細は依然不明である。 年齢、年代別では、乳児、高齢者に気道異物事故が多く発生しており、年齢が1歳増す ごとに3%づつ生存率が低くなっていくとの報告もある。。 異物事故の原因の多くは、餅、ご飯、果物・野菜、菓子、肉などである。 気道異物事故が一番多い月は、1月、12月であり、最も少ない月は、7月である。 餅による気道異物事故は1月が最も多く、次いで12月、他の異物についてはあまり変化がなかった。 異物除去方法は、背部叩打法が最も多く64.6%。次いで指拭法 16.0%。ハイムリック法9.2%。 掃除機による吸引が5.2%であった。 〇救急車到着前に市民による異物除去: 市民による異物除去実施率は62.1%であった。救急要請受信時において異物除去の 口頭指導を実施した場合、市民による異物除去実施率は84.4%であった。 これに対し口頭指導を実施しなかった場合の市民による異物除去実施率は46.4%であった。 市民による異物除去実施の有無による異物除去効果は、実施されていた場合69.0%で異物 除去に成功しており、未実施の場合は38.6%であった(図8)。 市民による異物除去実施による転帰は、実施した場合の生存率は76.3%。未実施だった場合 の生存率は50.9%であった。 市民による異物除去努力を多変量解析すると、異物除去成功、不成功に関わらず市民による 異物除去努力が生存率を3倍高くした。 〇異物除去実施者: 異物除去実施者別では、家族が66%と最も多く、次いで福祉施設職員の9.3%、看護婦8.3%、 医師5.6%であった。 欧米においては、成人に対してはハイムリック法、乳幼児に対しては背部叩打法を指導している。 わが国では、各応急手当普及啓発機関での指導方法が統一されていないばかりか、消防機関の応急 処置指導要領には背部叩打法、ハイムリック法、側胸部圧迫法いわゆるハイムリック変法など、 様々な方法が記載されており、どのような優先順位で施行すべきかが必ずしも明らかにされていない。 また、掃除機による吸引という他国に例をみない手技が、多くの消防本部で指導されている。 「救急隊員の行う応急処置等の基準」の改正により救急隊にも喉頭鏡、マギール鉗子による異物除去 が認められ、今回の調査においても喉頭鏡、マギール鉗子による異物除去法が最も多く試行され、 また成功率も高く処置拡大効果があった。今後も気道異物事故に対する市民教育を推奨する必要性が 大きいことを示唆している。 -------------------------------------------------------------------------------- 参考文献 平成11年度自治省消防庁委託研究 報告書) 竹田 豊、越智元郎*、畑中哲生**、白川 洋一* 出雲市外4町広域消防組合、愛媛大学医学部救急医学*、救急救命九州研修所**