西村内科脳神経外科病院

メタボリックシンドローム

 
         
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メタボリックシンドローム(英 metabolic syndrome、代謝症候群、単にメタボとも)
とは、内臓脂肪型肥満(内臓肥満・腹部肥満)に高血糖・高血圧・高脂血症のうち2
つ以上を合併した状態をいう。WHO、アメリカ合衆国、日本では診断基準が異なるた
め注意を要します。日本国内でも幾つかの基準があり、問題点もあります。以前より
シンドロームX、死の四重奏、インスリン抵抗性症候群、マルチプルリスクファクター
症候群、内臓脂肪症候群などと呼称されてきた病態を統合整理した概念です。

 
1)概要
      高血糖や高血圧はそれぞれ単独でもリスクを高める要因ですが、これらが多数
      重積すると相乗的に動脈硬化性疾患の発生頻度が高まる為、リスク重積状態を
      より早期に把握しようという試みが考えられてきました。
   このようなリスクの集積は、偶然に起きるのではなく、何らかの共通基盤に基
      づくと考えられ、世界ではインシュリン抵抗性を共通基盤と考えるのが一般的
      ですが、日本では特に内臓脂肪の蓄積による肥満が共通の基盤として着目され
      ています。
   しかし、2007年9月には、内臓脂肪体積および腹部皮下脂肪体積と、各種炎症
      マーカーおよび酸化ストレスマーカーとの関連を詳細に検討したFramingham 
      Heart Studyによって、内臓脂肪も皮下脂肪も、これらのメタボリック症候群
      の重要なマーカーとの関係がほぼ同等であることが判明し、内臓脂肪だけが
      メタボリック症候群の原因とする、「内臓脂肪症候群」という、日本で主流と
      なっている学説が一面的であることが示唆されました。 メタボリックシンド
      ロームでは、腹部肥満=男性型肥満ともいわれている上半身型肥満=リンゴ型
      肥満に対して注意が呼びかけられています。
   しかし、日本肥満学会の診断基準によれば、日本の中年男性の半分近くがこの
     「症候群」またはその予備群に該当するものであり、疾患として扱うのが妥当で
      あるかどうか議論になっています。

      平成19年(2008年)から始まる特定健診制度(糖尿病等の生活習慣病に関する健康
      診査)では、メタボリックシンドロームの概念を応用して糖尿病対策を行う事を目
      指し、40歳から74歳までの中高年保険加入者を対象に健康保険者に特定健診の実施
      を義務化すると共に、メタボリックシンドローム該当者、または予備群と判定され
      たものに対して特定保健指導を行うこととなりました。5年後に成果を判定し、結果
      が不良な健康保険者には財政的なペナルティが課せられることとなりました。
      厚労省は、中年男性では二分の一の発生率を見込むなど、約2000万人がメタボリック
      シンドロームと予備群に該当すると考えており、これを平成24年度末までに10%減、
      平成27年度末までに25%減とする数値目標を立てています。
      これにより医療費2兆円を削減するという。これらの数字は、「医療制度改革大綱
    (平成17年12月1日 政府・与党医療改革協議会)の数値目標をなぞったものだが、実現
      性を危ぶむ声が強く、逆に、5兆円の無駄使いになるという試算もあります。そして、
      このメタボ健診政策の強行によって、がん検診などが圧迫される可能性も指摘されて
      います。


2)経緯
    1988年、生活習慣病の三大要素(高血圧・糖代謝異常・脂質代謝異常)がインシュリン
    抵抗性を基礎に密接に関連して、糖尿病と心血管疾患を引き起こすという学説が、Reaven
    GMによって「Syndrome X」との研究名で報告され、その翌年にKaplan NMによる「死の
    四重奏」と題する研究報告がなされたのを契機に、インシュリン抵抗性症候群の研究が
    盛んとなり、1993年、Hotamisligilが肥満とインシュリン抵抗性の間に炎症が介在する
    ことを指摘し、1998年にWHO(世界保健機関)が『メタボリック症候群』という名称と、
    その診断基準を発表した事により、「メタボ」が一般に知られる病態名となりました。

    2001年に簡便なNCEP-ATPV診断基準ができて、これが世界的に普及しましたが、2004年に
    Ridkerらが炎症マーカーであるCRPを診断項目に加えることを提唱し、2005年に、国際
    糖尿病連盟(IDF)は腹部肥満を必須項目とするメタボの世界統一診断基準を作成しました。
    しかし、これが論文として掲載される前に、アメリカ循環器学会(AHA)とアメリカ国立
    心臓肺血液研究所(NHLBI)は、このIDF診断基準よりも、腹部肥満を必須項目とせず、
    腹囲、血圧、中性脂肪、HDLコレステロール、血糖の5項目中3項目を満たせばメタ
    ボリック症候群とする従来のNCEP-ATPV診断基準の方がよい、という共同声明を発表しま
    した。相前後して、アメリカ糖尿病学会(ADA)とヨーロッパ糖尿病学会(EASD)は、これ
    までのどの診断基準も欠陥だらけであり、現時点では、人々にメタボというレッテルを貼っ
    てはならないという共同声明を発表しました。

    その後、メタボの診断は有用であるとするAHAのGrundyと、メタボの診断は有害であると
    するADAのKahnとの間に論争が繰り広げられ、メタボの概念の提唱者であるReavenは、
    現行の診断基準では、メタボに当てはまらない人の方が、メタボと診断される人よりも明
    らかに高リスクである、というシナリオがいくらでも想定される事を具体的に例示して、
    人々にメタボというレッテルを貼ってはならないというKahnらの見解に賛成の意を表明しま
    した。

    Reavenは、数ある診断基準の中でもIDF診断基準(日本の「メタボリックシンドローム-
    内臓脂肪症候群」はこれに近い)が最も危険である事を指摘し、これまでに報告された、
    クランプ法で厳密に測定したインスリン抵抗性と、内臓脂肪面積、皮下脂肪面積、および
    BMIとの相関関係を研究した論文を表にまとめて、インスリン抵抗性と内臓脂肪面積が、
    特別強い関係にある、とは言えない事を明らかにした。Grundyは、メタボリック症候群
    は短期リスク(10年)を評価する道具ではなく、長期リスクを評価する道具であると述
    べているが、最近、30年に及ぶ長期リスクの研究でも、メタボはその個々の成分以上の
    予後評価の情報を与えないという結果が報告された。また、彼はメタボと診断すべきか
    否かの論争はAHAとADAの利害対立を背景としているかのように述べてるが、AHAとADAは、
    2006年6月、それを否定して、「心血管疾患と糖尿病予防のために」という簡潔な共同声明
    を発表した。この中で、メタボという診断をすべきか否かの賛否両論に触れ、メタボの診断
    に拘らず、肥満、血糖、血圧、脂質異常、喫煙の重要性を指摘して、文明社会、特に欧米
    に蔓延する肥満の予防と治療を呼びかけた。また、2007年6月には、アメリカ糖尿病学会、
    アメリカ栄養学会、北米肥満学会が腹囲に関して共同声明を発表し、現時点では、腹囲の
    基準値はすべて、科学的根拠が不十分であり、今後確立される科学的基準値は人種別、
    性別、年齢別、肥満度別の非常に複雑なものになるであろうと指摘した。そして、2007年
    9月には、内臓脂肪体積および腹部皮下脂肪体積と、各種炎症マーカーおよび酸化ストレス
    マーカーとの関連を詳細に検討したFramingham Heart Studyによって、内臓脂肪も皮下脂肪
    も、これらのメタボの重要なマーカーとの関係がほぼ同等であることが判明し、内臓脂肪
    だけがメタボの原因とする、「内臓脂肪症候群」という、日本で主流となっている学説が
    一面的であることが示唆された。

   但し、心血管疾患の危険因子はインシュリン抵抗性を中心に集積するという現象は事実であり、
   最近、インシュリン抵抗性と炎症が絡みあって、内皮機能障害と動脈硬化をもたらす事、
   及び、その背景に、身体計測の肥満よりも、内分泌疾患としての肥満(脂肪ホルモンの失調
   状態)がある事が明らかにされてきており、病理学的にはマクロファージ(炎症性細胞)の
   脂肪組織への集積が重要視されている。

   尚、近年、日本においても肥満者が増加しつつあると考えられており「メタボリックシンド
   ローム」を提唱することで、肥満・生活習慣病のリスクが本邦でも蔓延しつつあることを
   示し、一般に啓蒙を促した点においては一定の成果が上がっていると考えられる。しかし、
   一方で「メタボ」診断基準については、いまだ問題点があると考えられ、特定検診に多くの
   医療費が投入されることについては疑問も持たれている。これらの問題点については、後述
   の「メタボリックシンドロームにまつわる問題点」を参照されたい。


3) 診断基準

        日本人のためのもの
            世界糖尿病連盟(IDF)基準(2005年) 
            腹囲男性90cm、女性80cm以上が必須。かつ 
            血圧130/85mmHg以上。 
            中性脂肪150mg/dL以上。 
            HDLc男性40mg/dL、女性50mg/dL未満。 
            血糖100mg/dL以上。 
       の4項目中2項目以上。 
       
        日本肥満学会(JASSO)基準(2005年) 
            腹囲男性85cm、女性90cm以上が必須。かつ 
            血圧130/85mmHg以上。 
            中性脂肪150mg/dL以上またはHDLc40mg/dL未満。 
            血糖110mg/dL以上。 
        の3項目中2項目以上。 
 
        改訂NCEP-ATPIII基準(2005年) 
            腹囲男性90cm、女性80cm以上。 
            血圧130/85mmHg以上。 
            中性脂肪150mg/dL以上。 
            HDLc男性40mg/dL、女性50mg/dL未満。 
            血糖100mg/dL以上。 
        の5項目中3項目以上。 
       
        九州大学(久山町研究グループ)の提案(2006年) 
           JASSO基準の腹囲を男性90cm、女性80cm以上に改変したもの。 
           腹囲をCRPに置換した提案(2006年) 
           改訂NCEP-ATPIIIの腹囲をCRP0.65mg/L以上に置換したもの。
           この提案は、病気としての肥満症の本質は、見かけの肥満や身体計測上の脂肪量
           または内臓脂肪量そのものではなく、脂肪細胞の肥大・壊死とそれを冠状に取り囲む
           マクロファージという病理学所見およびそれに伴う炎症とインシュリン抵抗性である、
           という最近の知見に基づいている。 
  
      2007年に、アメリカ糖尿病学会、アメリカ栄養学会、北米肥満学会は混乱する腹囲基準値
       に関して共同声明を発表し、現時点では、腹囲の基準値はすべて、科学的根拠が不十分で
       あり、今後確立される科学的基準値は人種別、性別、年齢別、肥満度別の非常に複雑なも
       のになるであろうと指摘した。

最近の研究では、これらの診断基準には互いに大きな不一致が見られ、2つの診断基準の間の一致
度は、男性で平均40%、女性で平均50%であり、IDF基準に協調して作ったとされるJASSO基準とIDF
基準の間の一致度は、男性で30%、女性で40%であり、5つの診断基準全てで一致したのは、男性15%、
女性20%だったと報告されている。


4)メタボリックシンドロームにまつわる問題点
      日本の診断基準に関する議論
            現行の日本の診断基準とされているものは、日本肥満学会の提案した「内臓脂肪症
            候群」を、日本動脈硬化学会、日本肥満学会、日本糖尿病学会など7学会から選出さ
            れた14人の委員で構成された「メタボリックシンドローム診断基準検討委員会」
          (14人の委員のうち8人は日本肥満学会の役員)が約1年間かけて検討して承認し、
            2005年4月8日に日本内科学会総会で発表したものである。内臓肥満を必須項目とし、
            その基準は臍レベル腹部断面での内臓脂肪面積100cm2以上とした。ただし内臓脂肪
            面積を直接測定する事は健康診断や日常臨床の場では容易ではない為、腹囲の測定
            により代用し、男性85cm以上、女性90cm以上を内臓脂肪型肥満と診断する。しかし,
            できれば腹部CT撮影等により内臓脂肪面積を精密に測定する事が望ましいとした。
            ただし、内臓脂肪面積の基準値を男女混合で決めて、そこから男女別に腹囲基準値
            を決めた手法は論理的に誤っているという指摘もある。
            その後の、内臓脂肪面積も腹囲も一貫して男女別に検討した複数の研究では、異なる
            数値が提唱されており(例えば、NTT・京都大学グループの研究では内臓脂肪面積の
            最適基準値は、男性100平方cm、女性65平方cmとなった)、各方面から、日本肥満学会
            に対して、久山町研究やその他の最近の多くのエビデンスに基づき、現行の基準を再
            検討する必要性が指摘されている。しかしながら、2007年10月19日、日本肥満学会は
            腹囲基準値を修正しないと発表した。

      
日本のメタボ診断基準の問題点を箇条書きに纏めれば以下のようになる。
        日本の診断基準は、内臓脂肪は悪玉、皮下脂肪は善玉とする「内臓脂肪症候群」という偏
        った学説に基づいているが、メタボの主要原因と考えられるインシュリン抵抗性との関係
        においても、炎症、酸化ストレスとの関係においても、内臓脂肪と腹部皮下脂肪はほぼ同
        等であることが判明した。 
        日本肥満学会が、内臓脂肪面積のカットオフ値を男女無差別に決め、ここから男女別に腹
        囲のカットオフ値を決めたのは論理的に矛盾している。 
        男性の腹囲カットオフ値を85cmとしたメタボは、久山町研究などで、心血管疾患発症の有
        意なリスクにならないことが判明した。 
        女性は、久山町研究などで、腹囲80cm-90cmの群に心血管疾患の発症が集中していることが
        判明し、女性の腹囲のカットオフ値を90cmとすると、多くの高リスクの人をメタボから除外
        することになる。 


日本では肥満が「流行」していないので、肥満をメタボの必須条件とすると高リスク群の多くが
メタボから除外されることが、NIPPON DATA90で判明し、医療経済学的に見ても、国保10年コホルト
研究で、メタボにほぼ相当するであろうと考えられるグループの医療費は総医療費のわずか2.9%に
過ぎないことが判明した。したがって、肥満をメタボの必須条件とする診断基準は予防医学的にも、
医療経済学的にも危険である。 
メタボ診断基準検討委員会は、細かな基準項目をわざわざ世界の診断基準と異なるものとして、
メタボの国際比較研究を困難にした。 
世界ではメタボ診断の是非が論争されており、日本でも診断基準の違いによって大半の人で診断
が食い違うことが判明し、暫定的にもメタボ診断は不可能であることが示唆された。 

IDF基準と日本基準との矛盾
IDF基準は、腹部肥満が診断の必須項目であるという点で日本基準と類似しているが、腹囲の
カットオフ値が異なるほか、血糖値の上限がより厳しくなっている、脂質代謝異常の判断基準
が2項目に分かれている、などの違いがある。日本の学会が決定した腹囲の基準値が国際学会から
否定されるという異例の事態となっているが、現時点で解決の見通しは立っていない。
メタボリックシンドローム診断基準検討委員会はIDF基準に協調して、日本基準を決めたと言って
いるが、実際に検証したところ、IDF基準と日本基準の一致度は、男性では30%、女性では40%で
あり、大半は矛盾していた。


病態に対する概念
世界ではインシュリン抵抗性を基礎とした病態と考えられているが、
日本では現在、「蓄積された内臓脂肪組織は様々なアディポサイトカイン(内分泌因子)を分泌し、
その中のアディポネクチン、レプチン、TNF-α、ビスファチンなどの遺伝子発現レベルでの産生
異常が代謝異常を引き起こし、動脈硬化などにつながると考えられ、内臓脂肪面積の測定によって
この病態が把握できる。」とする大阪大学医学部チームの学説が、メタボリックシンドロームの概念
として、厚労省によって国民に強要されている。内臓脂肪の細胞レベルの性質と個体レベルの内臓
脂肪面積との間には大きなギャップがあるにもかかわらず、彼等はこれを短絡的に直結したのである。
この疾患の概念や診断基準については、日本国内でも、大阪大学グループの学説に異議を唱える動き
も出てきており、また、WHO、IDFなどの機関ごと、あるいは国ごとに大きく異なる部分がある。
2005年に、アメリカとヨーロッパの糖尿病病学会はメタボ診断をしてはならないという共同声明を
発表するなど、世界的に統一された概念は現時点では未確定で議論が続けられている段階である。

日本医師会は生涯教育シリーズ「メタボリックシンドローム」で、これが、心血管疾患のリスクを
35.8倍にするようなイラストレーションを掲載しているが、世界のこれまでの疫学データのメタ
アナリシスでは、心血管疾患のリスクは平均1.74倍と報告されている。日本の疫学研究では、
14年間におよぶ久山町研究の解析で、日本肥満学会の診断基準によるメタボリックシンドローム
は男性では心血管疾患の相対危険度が1.4倍であり、この研究では統計学的に有意なリスクになら
ない事が判明した。

1993年、Hotamisligilは肥満とインシュリン抵抗性の間に炎症(TNFα)が介在することを突き止め、
最近のいろいろな遺伝子操作による動物実験では、身体計測上の肥満や内臓脂肪ではなく、脂肪細胞
の肥大化・壊死とそれを冠状に取り囲むマクロファージ(炎症性細胞)の集積が、炎症とインシュリン
抵抗性をもたらし、これがメタボリック症候群の病態の基礎となっている可能性が次第に明らかに
されてきている。内臓肥満や超肥満でも脂肪組織の組織像が正常で、メタボリック症候群の病態を伴
わない動物モデルや、逆に、肥満も内臓肥満もないのに脂肪組織の組織像が脂肪細胞の肥大化・壊死
とそれを冠状に取り囲むマクロファージ(炎症性細胞)の集積という肥満症の所見を呈して、メタボ
リック症候群の病態を伴う動物モデルが報告されてきている。さらに、2006年、日本の2つの異なる
研究グループは、肥満も内臓肥満も脂肪細胞の肥大化もないのに脂肪組織の組織像にマクロファージ
の集積が見られ、メタボリック症候群の病態を呈する動物モデルを報告した。 
2007年には、筑波大学のグループが、マウスの脂肪酸延長酵素を欠損させることで、脂肪蓄積があっ
ても耐糖能異常を来しにくい動物モデルを報告した。また、最近、内臓脂肪だけに炎症が生じてメタボ
の病態を呈する、正に「内臓脂肪症候群」とも言うべき動物モデルが報告されたが、驚くべきことに、
このモデルでは内臓肥満は認めず、皮下脂肪と肝臓の脂肪増加が認められたのである。また、最近の
高脂肪食によるマウスの研究では、メタボの病態の進行の途中で内臓脂肪は増加から減少に転じたの
である。
したがって、「内臓脂肪面積」を測定すれば内臓脂肪の病的状態が把握できるとか、皮下脂肪は内臓
脂肪の悪影響を抑制するとかという「内臓脂肪症候群」なる学説は、あまりにも短絡的で非科学的で
あると批判せざるを得ない。

脂肪病またはメタボリック症候群の本質は、肥満とか腹部肥満とか内臓肥満といった見かけ上の問題
ではなく、過剰なエネルギーによる脂肪組織の炎症であるというデータが集積されてきており、長鎖
脂肪酸とセラマイドの種類と濃度がこの炎症と関係しているらしいというデータも出てきていて、
今後も多方面からの研究による解明が期待される。


治療と予防
基本的に「痛い」とか「辛い」といった自覚症状に乏しいのが生活習慣病の特徴であり、
その治療は「自覚症状の緩和」ではなく、この病態を長期間・慢性的に持続させた結果
として生じてくる「合併症予防」に目標がおかれる。メタボリックシンドローム(代謝症候群)
の場合、動脈硬化の発生・進展防止が治療目標となり、そのための脂肪蓄積の進行防止・
解消を目的に食事療法による摂取カロリーの適正化と、脂肪燃焼を促す目的での運動療法
が基本となる。
更に、食事・運動といった生活習慣の改善により解消されない危険因子(耐糖能異常、
脂質代謝異常、高血圧など)に対しては薬物療法を並行して実施する場合もある。また、
喫煙は個別の動脈硬化の危険因子である事が疫学的に証明されているので、禁煙努力も
並行して行うべきである。

しかし検診・脳ドックなどで無自覚のまま動脈硬化の進展が検査などにより発見されたり、
動脈硬化性疾患(狭心症、心筋梗塞、脳卒中など)を発症した場合は、降圧薬(降圧効果以外
にも動脈硬化進展抑止作用があるとされるアンジオテンシンII受容体拮抗薬などがよく用いら
れる)、抗血小板剤(アスピリンなど)の投与などが検討され、バルーンカテーテル等による
血管内療法や、血栓溶解療法、さらに冠動脈バイパス術のような外科的治療法がとられる場合
もある。

メタボリック症候群を予防するためには、肥満者の「流行」を予防することが重要である。
現在、BMI(体重/身長の2乗)30以上の肥満の頻度は、アメリカでは30%以上、日本では3%であり、
これは肥満が個人の生活習慣というよりも、集団レベルの生活環境によって「流行」すること
を示していると考えられる。最近の研究で、肥満が社会的絆を介した「伝染病」であり、異性
よりも同性に「伝染」し易いことが明らかにされている。肥満の「流行」を防ぐためには、
個人の努力のみでは不可能であり、保健上の政策・制度的取り組みの必要性が生じていると考
えられる。特に高カロリー食品や肉類の規制が重要と考えられ、ランセットでは、地球温暖化
防止のために肉食規制の必要性が指摘されており、日本では現在の野菜、魚、米を中心とした
日本食を守り、食環境の欧米化を阻止することが必要と考えられる。


関連病態
   動脈硬化症 
   高脂血症 
   高血圧症 
   糖尿病・耐糖能異常(境界型糖尿病) 
   心筋梗塞 
   脳梗塞 
   インスリン抵抗性・高インスリン血症 



   
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』